世の中には、ブリテンの四つの海の間奏曲と、ベートーベンの交響曲第7番が同時に収録されているお得なCDが存在することがわかった。DGから出ている、バーンスタイン/ボストンの「ファイナル・コンサート」というCDである。1990年の録音。で、1年前のNYPとのファイナルのときは、エル・サロン・メヒコを演奏したのだとか。ということは、このプログラムは、まさにバーンスタイン・コンサートと言っても良いのかもしれない。一体、誰がこんなプログラムを考えたんだろうね???
で、四つの海の間奏曲のおさらい。
ピーター・グライムズは、プロローグ+三幕。各幕は二場ずつ。だから、計7場。各場の間に間奏曲があるので、間奏曲は全部で6個。
四つの海の間奏曲は、第1間奏曲、第3間奏曲、第5間奏曲、第2間奏曲を切れ目なくつなげたもの。ピーター・グライムズの作品番号は33。四つの海の間奏曲の作品番号は33a。ちなみに、第4間奏曲はパッサカリアで、これをオペラから切り離したものが作品33b。第6間奏曲は断片的なので切り離すのは無理でしょう。
編成は、フルート2(両方ともピッコロ持ち替え)、オーボエ2(2番はアングレ持ち替え)、クラリネット2(2番はエスクラ持ち替え)、バスーン2、ダブルバスーン1、ホルン4、ラッパ3(1番,2番はC管、3番はD管)、ボントロ3、チューバ1、ティンパニ1人、打楽器2人、チェレスタ1、ハープ1、弦五部。
舞台裏にオルガン1、鐘一式、チューバ(フォグ・ホーン、オケの団員が演奏すること。フォグ・ホーンって何?)
舞台上にダンス・バンド(オケの団員が演奏すること)。クラリネット2、バイオリン1、ダブルベース1、ドラムセット1
このうち、四つの海の間奏曲には、アングレ、チェレスタ、オルガン、フォグ・ホーンなし。ダンス・バンドもなし。
一曲目、「夜明け」(第1間奏曲=第一幕第一場への間奏曲)
法廷のシーンで始まったプロローグが、ピーター・グライムズとエレンの調の異なるディアローグ(ダイアログ)の最後の音から、夜明けの間奏曲が始まる。いかにも冷たくて澄んだ空気が流れている感じのする朝。フルートと高弦が澄んだ空気を、クラリネットとハープとビオラがかもめかなんかの鳥を、金管を中心とするコラールが海から昇ってっくる太陽を表わしている感じ。ブリテンにありがちな分散法を用いたオーケストレーション。
フルートと高弦の装飾音符を伴う動機が残って、村人たちの朝の合唱に続く。この村人の朝の合唱がやりきれない。無表情で冷たくて怖い。第三幕の最後にもう一度演奏されるのだけど、その冷たさと言ったらありえな~い。
が、この作品33aでは、次の間奏曲に移行してしまう。
ニ曲目、「日曜の朝」(第3間奏曲=第二幕第一場への間奏曲)
波瀾万丈を予感させる嵐のシーンで終わった第一幕。それとは打って変った雰囲気のする第二幕の始まり。日曜の朝、教会に行く日であるからして、朝から教会の鐘が鳴っている。鐘を担当するのは、アルルの女の頃からホルンと決まっている。本物の教会の鐘も舞台裏で鳴っている。
木管のメロディーは、フルートだけダブル・タンギング。それもはじめだけ、そのうち、オーボエもクラリネットもダブルタンギング相当の速いタンギングを強いられる。D管のトランペットも入って、華やかである。
オペラでは、途中からエレンが歌いだし、クラリネットのゆらゆらとしたシンコペーションの動機が静まったところで、教会で賛美歌を歌うシーンに入る。ここで、舞台裏のオルガン登場。あっ、舞台裏だから登場はしないか・・・。
が、この作品33aでは、次の間奏曲に移行してしまう。
三曲目、「月の光」(第5間奏曲=第三幕第一場への間奏曲)
オペラの筋の流れとしては、第二幕の最後で少年は崖から落ちてしまったので、やりきれなくなって、大分、暗くなってきている状態。
この間奏曲で面白いことと云えば、クラリネットが使われていないこと。理由は簡単。この間奏曲に続く第三幕第一場は月明かりの下の村のストリートのシーン。ムート・ホールではダンス・バンドがバーン・ダンスを演奏する。この舞台上にダンス・バンドに二人のクラリネット奏者はかりだされるのである。だから、二人のクラリネット奏者はその準備のため、この間奏曲に出番は無いのである。
ところで、この間奏曲は譜割りが異常に難しい。絶えずシンコペーションが続く4/4拍子に、二重3連符を重ねるという、とんでもない譜割。現代音楽もはなはだしい。指揮者はどうやってこの曲を振るのだろう???
オペラでは、居酒屋のシーンに変わるが、作品33aでは、次の間奏曲に移行してしまう。
四曲目、「嵐」(第2間奏曲=第一幕第二場への間奏曲)
実際には、この「嵐」という曲は、第2間奏曲と、第一幕第二場の最後の部分がくっついて出来ている。
第一幕第二場はボア屋という宿屋だか居酒屋のシーン。この曲は巧妙に出来ている。
先ず、使われている動機は、風がうねるような金管の3連符が含まれている動機を除いて、全部、第一幕第一場で登場したものばかり。別々に登場したものが、この間奏曲でうまい具合に統合されているのだから驚く。
で、オーケストラ全体が音階を急降下して第一幕第二場に突入。本当は、この第二場の方が面白い。
宿屋にいろんな人が入ってくるのだけれど、その人たちが宿屋のドアを開けるたびに、嵐の動機が演奏されるのだ。宿屋の外はすごい嵐で、ドアを閉めるのも大変である。
あーだこーだあって、そのうちみんなで7拍子の踊りで盛り上がる。しかし、その頂点でエレンとホブソンが緊迫した事実を掴んで登場。またもや、嵐の音楽に逆戻り。一同、驚きのもとに、衝撃的な終わり方をするのだ。
作品33aではこの部分をコーダとしているのである。まるで、エルザの大聖堂への行列を単独で演奏するときのように。
というワクワクの曲なので、是非、吹いてみたいのですが・・・。