ブラームスのハイドンの主題による変奏曲に作品56aと作品56bがあるように、レーガーのモーツァルトの主題による変奏曲とフーガにも作品132のほかに作品132aというのが在る。
なんのことかわからない人のために、ブラームスのそれは作品56aが管弦楽版で作品56bが2台ピアノ版である。そして、レーガーのそれは作品132が管弦楽版で作品132aが2台ピアノ版である。
そして、この前の日曜日、作品132aの楽譜を注文しようと神戸楽譜に行ったら棚にあったので即、買ってしまった。
ちなみに、作品132の管弦楽版のポケットスコアは随分昔に買ってあった。この曲をエアチェックしたのは、高校の頃だった思う。大学のときにも、別の演奏をエアチェックしてたはずだ。CDを買ったのはいつだったかな?それも、随分昔。2枚持ってて、一枚はフィリップスのコリン・デイヴィスのバイエルン放送響で、ヒンデミットのウェーバー・メタメルフォーゼンとのカップリング。もう一枚は、テルデックのクルト・マズアのニューヨークフィルで、アイブズ作曲W.シューマン編曲のアメリカ変奏曲、ブラームスのハイドン・バリエーションとのカップリングである。
で、話を作品132aに戻して、楽譜をつらつら眺めていたら、得体の知れない変奏があった、第8変奏と書いてある。なんじゃこれ?これって管弦楽版のどの変奏にあたるんだっけ?と思って、ページをめくっていくと次の変奏が第8a変奏なのだ。そして、脚注に編曲者の名前が書いてある。これは、すごい発見!すなわち、レーガーは作品132aを書いたとき、第8変奏はピアノ2台には不向きだと判断し、全く違う変奏に入れ替えてしまったのである!だけど、第8変奏はとても素敵な変奏なので、出版社が気を利かせて、別の人が編曲した版を第8a変奏として追加して印刷してくれたのである。2台ピアノの音源はないので聞いてみたいものだ。
こんなふうに、管弦楽版とそうでない版が存在する作品で、作曲者が一部をごっそり入れ替えた例として、今思いつくのは、メシアンのキリストの昇天がある。4曲から成る組曲で、管弦楽版とオルガン版があって、そのうち3曲目だったかが、全く違う曲になっているのである。
はてさて、レーガーのモーツァルト・バリエーションに話を戻すと、この曲には何を血迷ったかピアノ独奏版というのも存在する。編曲したのはサロモン。CDはペトロネル・マラン演奏のヘンスラー盤。このCDのタイトルは"Transfigured Mozart"。
つまり、モーツァルトの主題の原曲はピアノソロなわけだけど、それを管弦楽に編曲して、それをもう一回ピアノに戻すという編曲になっているわけだ。こういうのを、逆編曲と言うのだ!当然、すごい超絶技巧の演奏になっている。
ところで、逆編曲という言い出したのは実はBalではない。バッハがコレルリの弦楽の曲のメロディーをもとにオルガン独奏用のフーガを書いたのだが(BWV 579)、ホグウッドはそれを弦楽に編曲したのがある。それが、セントポール合奏団の演奏によるDECCA盤に収録されている。このCDノートの中で、解説者のボーウェン(Meirion Bowen)が、「いわば逆編曲(so-to-speak reverse transcription)」と言っているのだ。
ちなみにこのCDには、ほかに、これまた珍しい、ホルストのセントポール組曲の管弦楽版というのがある。ダーガソン・ファンタジーが、「吹奏楽のための第2組曲」の第4楽章で管楽器だけだったのが、「弦楽のためのセントポール組曲」の第4楽章に転用されて弦楽器だけになったのに、そこに、管楽器がプラスされたというへんてこな版である。
さて、モーツァルトの主題による変奏曲とフーガに話を戻そう。そして、そのサロモンのピアノ独奏版では、第8変奏は、管弦楽版に従っている。やっぱ、このレーガーのモーツァルト・バリエーションは第8変奏が肝だと思うのである。ゆっくりしたテンポで約5分もかかる長い変奏なので、聞いてて眠ること間違いなしなのだけれど・・・。
そして、最後におまけ。サロモン編曲版が収録されたTransfigured Mozartを弾いたこのペトロネル・マランという人。ほかに、Transfigured BachというCDも出してるらしい。是非、買わねば!
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