ボロディンSQ聞きました。本番間際でチケット取ったので、いい席は残ってなくて、バルコニーの前から4番目。
曲目は、ブラ2SQと、シューマンのP5、アンコールはシューマンの第3楽章とアンダンテ・カンタービレ。
ボロディンSQ素晴らしい!プロを聞くたびに思うのですが、プロって、全然雑音がないなぁ、と。
弦楽器という楽器には、糸が張ってあって、その糸をこすると、びよ〜んという音でして、胴体が共鳴する仕組みの楽器であるということを、再々再認識させられました。
つまり、糸をこする音、または、こすれた音は、びよ〜んという音しかしなくて、それが増幅されたびよ〜んという音がするのです。
そこには、弦に弓をあてた音というのは全くなく、指が弦を触る音、指板を触る音も全くせず、びよ〜んという音以外の音はないのです。
これは、他の楽器にもあてはめるべきことなのでしょう。発音に関わる一切の音は必要なく、キーの音も何の音も、ただ必要なのは、楽器本体が共鳴する音だけだということです。
世界最高峰の音って素晴らしいです。
さらに、アンサンブルも凄いです。必要最小限のザッツで、あーして、入りもピチカートも表現もなんでもかんでも合ってしまうのです。これはどういうことでしょう?
最も圧巻だったのは、ブラームスの第2楽章の最終音です。ノンビブラートのディミュニュエンドの和音で終わるのですが、4人のボウイングや音量が、全く同じで、ハーディガーディを聞いているようでした。聞いているこちらとしては、この素晴らしい均衡がいつ崩れるかと冷や冷やで、息もできないほどでしたが、均衡を破られることは最後まで無かったのです。これはどういうことでしょう?
さて、次は、音響について。
やはり、バルコニー席というのは、音響としては、あまりよくありませんでした。直接音と間接音のバランスが4人4様になってしまうのです。楽器の表面が自分の方に向いている楽器は、直接音が良く聞こえ、そうでない楽器は、その斜め加減で聞こえ方が変わるのです。
そして、ピアノにいたっては、ほとんど間接音しか聞こえませんでした。そしてまた、ピアノの間接音というのは、ステージの後ろ半分を大きく覆いつくすような体積の響きを作り出すのです。まるで、ホールの音響構造が目に見えるかのようでした。
なので、ピアノの音がやけに大きく聞こえました。シューマンの第1楽章の展開部とか、第4楽章のfのところとか、弦が聞こえなくなってしまわないかと、手に汗握りながら聞いていました。でも、正面で聞いた方には、きっと、良いバランスだったのでしょう。京都公演の朝日新聞の評が良くて、やっぱり正面じゃないとね、と思いました。
バルコニー席から、原田さんの右手は良く見えました。手の甲の高さ、指の形も良くわかりました。弱音のときは、かなりの低位置で弾いていらっしゃって、音響のせいもあって、まるで、常に左のペダルを踏んでいるのではないかというようなヴェールのかかった音でした。
原田さんのシューベルト・チクルスの最後の室内楽も聞いてて思ったのですが(そのときは正面席)、弦楽器独奏、もしくは、二人に対し、それは見事な範囲の音量で演奏していらっしゃいましたから。
そして、次は、弦楽器とピアノという異なる楽器のアンサンブルについて。
一部、異種格闘技的な異なる次元に存在する音楽が出会ったと感じたところがないわけではありません。それは、弦楽器奏者の呼吸です。弦楽器にはアップボウとダウンボウがあるのに対して、ピアノの打鍵というのはダウンしかないということです。自分の場合、常に息を吐いて演奏するのですけど、あたかも、吸って音を出すような気分で音を出すことがあります。
そのことに特に気づいたのは、シューマンの第1楽章の途中のことなんですが、ピアノが何かの動機のアウフタクトでクレッシェンドして頂点を誘導する、というところが、たしか、呈示部と再現部であって、そう感じました。シューマン自身はピアノが弾けたわけですから、シューマンの感覚としては、どちらなのでしょうね。
最後に一つ、こういう生の演奏会に行って良かったなぁ、と思ったことを書いておこうと思うのですが、それは、シューマンの第二楽章の、第二クープレからロンドに戻るところなんです。そこが、シューマンの苦悩というのを、追体験したような気分になりました。こういうことを感じることが出来たのは、多分に、原田さんのプログラムノートが素晴らしかったからです。
やっぱり、生の演奏って、いいですね。
おまけとして、アンコールの感想をちょこっと。最後のアンコールは、チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレでした。中間部の第2バイオリンとビオラの伴奏が素晴らしい!合奏(複数の人で演奏すること)を聞く醍醐味というのは、こういうところにあります。
あと、第1バイオリンの歌に、してやられました。ロシア語がしゃべれる人がこの曲を演奏するとこうなる。この曲のメロディーはロシア語で歌うように出来ている、という当たり前のことに、またまた打ちのめされました。ロシア語で演奏すれば、装飾音符の演奏は、ごくごく自然にそうなるのです。そうして、はじめてそのメロディーが見えてくるのです。
こうして外国にお住まいの方が日本に来て演奏してくれるなんて、なんて素晴らしいことでしょう。飛行機に乗らずに、本物を味わうことができるのですから。原田さんを含めて。
素晴らしい演奏会でした。
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